優れたユーザー・エクスペリエンス(UX)とは、簡単に操作が始められ、ユーザーがすべてのステップで何をすべきかを直感的に理解できるようなプロセスを構築することです。 ユーザー・エクスペリエンスの原動力はテクノロジーの進化というよりも、いかにビジネスをしやすくするか、そして増え続ける顧客ニーズにどう対応するかを考えることともいえるでしょう。
今日のユーザー・エクスペリエンスをデザインする業界では、テクノロジーと同じ速さで進化するトレンドに直面しています。ユーザー・エクスペリエンスのデザインは常に変化しており、現在の流行はすぐすたれる可能性もあります。そのため、ユーザー・エクスペリエンスの成功体験を生み出すためには、新しいアイデアや実験を受け入れることが重要なのです。
デジタルバンキングの台頭により、金融機関にとってユーザー・エクスペリエンスの重要性はますます高まっています。消費者は銀行の手続きにおいてはシームレスでパーソナライズされた体験ができることを期待し、一方金融機関は、よりユーザーが使いやすいと感じることが出来るように新しい機能やテクノロジーの導入を行っています。デジタルバンキング業界におけるユーザー・エクスペリエンスデザインの現状と新たな3つのトレンドを探ります。
「金融機関が、高まる顧客の期待に応えデジタル市場で競争力も維持するためには、ユーザー・エクスペリエンスデザインを重要視することが必須といえます」
- AI(人工知能)と機械学習
AIと機械学習は、最近注目を集めているトレンドのひとつです。特に、質問に答えたり、支出を監視したり、顧客の好みから商品をお勧めしたりするオンライン・アシスタントやチャットボットの形がデジタルバンキング業界でもますます普及しており、これらのテクノロジーは、データ分析や管理、セキュリティ、ユーザー・エクスペリエンスの向上にも役立っています。例えば、AIを使うと顧客データのパターンを迅速に特定することができ、機械学習ではリアルタイムでユーザーの行動を監視し、潜在的な詐欺を検出することが可能とされています。
- ゲーミフィケーション
もうひとつのトレンドは、ゲーミフィケーションへの活用です。ゲーミフィケーションとは、金融アプリなどの非ゲームにゲームデザイン要素を取り入れることにより、より魅力的で楽しいものにするプロセスです。これによりアプリがさらに楽しく活用でき、ポイントやバッジ、リーダーボードといったゲーム的要素を利用すればファイナンス実務自体もより魅力的なものになります。また、ゲーミフィケーションはユーザー教育にも使用でき、ユーザーは楽しくインタラクティブな方法で金融について学ぶことが出来るのです。
研究によれば、ゲーミフィケーションを利用することで企業は顧客とのインタラクションを40%も増やすことができるとされています。ロイヤリティやリワードプログラムを使えば、ユーザーがアプリケーションを使ってより健全に金融に関する決断ができるようになり、顧客維持とロイヤリティの向上にも役立つのです。
- アプリクリップとインスタントアプリ
デジタルバンキングにおけるもう一つのユーザー・エクスペリエンストレンドは、アプリクリップやインスタントアプリです。アプリクリップやインスタントアプリでは、ユーザーはデバイスにフルアプリをダウンロードしないでも、高速でシームレスに、フルアプリと同じようなユーザー体験ができます。デジタルバンキングにおいても、インスタントアプリやアプリクリップは近年トレンドとなっており、金融サービスにシームレスかつ便利にアクセスできる方法となっています。これらを使えば、バンキングアプリをダウンロードしていない顧客も、口座残高の確認、資金の移動、支払いなどが迅速かつ簡単に実行可能となります。インスタントアプリやアプリクリップは必要メモリやデータ容量も少なく、機密情報やパスワードの入力も不要ですのでセキュリティ面でも安心で、ユーザー・エクスペリエンスは快適なものとなるでしょう。モバイルの利用が増加し続ける中、今後インスタントアプリやクリップアプリは、デジタルバンキングの現場でますます普及することが予想されます。
結論…
デジタルバンキングにおけるユーザー・エクスペリエンスのトレンドは、人々の金融との関わり方にも革命をもたらしました。ユーザー・エクスペリエンスの向上により、ユーザーは口座を管理し、役立つ情報にアクセスし、取引をより簡単に完了できるようになったのです。
デジタルバンキングへの移行が進む中、ユーザー・エクスペリエンスのトレンドが銀行サービスの開発にも大きく影響することは明らかでしょう。AIと機械学習は、銀行のセキュリティ向上と不正行為の検出、顧客一人一人へのパーソナライズ提案を提供することを可能にします。また、ゲーミフィケーションは、金融をより魅力的でわかりやすいものにし、インスタントアプリやアドクリップは、顧客が金融サービスにより迅速かつ簡単にアクセスするため方法となっています。
デジタルバンキングを扱う金融機関は、ユーザー・エクスペリエンスデザインの最新トレンドを把握し革新的なテクノロジーを採用することにより競合他社との差別化を図り、進化する顧客のニーズに応えることができます。デジタルバンキングにおけるユーザー・エクスペリエンスデザインの最終的な目標は、顧客一人ひとりにあったニーズを満たす、シームレスでパーソナライズされた体験を創造することです。