世界中の銀行がISO 20022を導入するにあたって、多くの疑問や噂が生じているようです。この記事では、ISO20022にまつわる7つの誤解について解説していきます。
その1:ISO 20022は国内決済のみ対応
間違いです!ISO 20022は、決済メッセージや、決済、証券、貿易サービス、カード、外国為替などのビジネス分野のための新しい国際規格です。国内、地域、国際的なメッセージに対する市場の需要に対応しています。
そもそも、ISO 20022の初版の発行は2004年にまでさかのぼります。その後、企業や金融機関がACHやRTGSなどのシステムで採用するようになり、2018年にはSWIFTがISO 20022を使用した海外決済や現金報告トラフィックの採用を促進する計画を承認するに至りました。
その2:CBPR+のISO 20022への移行期限は2025年11月、まだまだ先なので急がないで大丈夫
誤解です! CBPR+(Cross-Border Payments and Reporting Plus)のためのISO 20022(MX規格*)の採用は2025年までに完了しなければならず、その時点でカテゴリー1、2、9のFINメッセージはFINサービスから撤退となる予定です。
2023年3月からは併用期間となりますので、一部の金融機関ではISO 20022により以前に比べて構造化されたリッチデータのやり取りができるようになるでしょう。一方、金融機関によっては、バックオフィスがISOメッセージを処理できるようになるまでは、一時的にインフローやローカルでトランスレーションを行う必要が生じたり、あるいは必要な変更を採用するために決済ハブソリューションに投資したりする必要もあるでしょう。
2023年3月より、金融機関はコルレス先の優先チャネル(MT規格またはMX規格)に関係なく、MX規格のメッセージの送信を開始することができます。さらに、CBPR+のガイドラインが更新され、新しいメッセージやビジネスルールが導入される予定です。
そこで金融機関は、SWIFT gpi、SWIFT Goなどを含むXML/MX形式へのサービスのアップグレードを検討する必要があります。また、ISO 20022を標準言語とするバックエンドシステムや決済チャネルとの互換性・統合性を確保する必要があります。
つまり、早い段階でISO20022を導入すれば、2025年11月が近づいたために急いでISO20022を導入する金融機関に比べてMX規格の利点を確認し、単純でコストのかからない方法で導入が可能とだということです。
2025年11月以降、MT198/298を除くMT規格のSWIFTによるサポートは終了します。
*MX規格は、SWIFTで使用するXMLメッセージの規格です。MX規格によるメッセージは、ISO 20022メッセージでもあるのです。
その3:CBPR+とはクロスボーダー決済のためのMT規格に代わる新しいメッセージ規格のこと
CBPR+は新しいメッセージ形式ではありません。ISO 20022メッセージを使用した新しいメッセージ規格、ワークフロー、使用ガイドライン、ルール、決済市場の慣行をカバーする一連のガイドラインです。
その4:MX規格の機能はMT規格と大差ない
間違いです!MX規格は様々な新機能を備えています。
- リッチデータ
「リッチデータ」は、MX規格への移行の大きな動機付けとなるでしょう。 MX規格の決済メッセージは、MT規格や他の規格よりもはるかに多くの情報を運ぶことができます。
- 支払人および受取人についての完全な情報
- 最終的な債務者と債権者
- 郵便番号と国番号
- 拡張された送金情報
- 支払目的コード
- クロスファンクション分析
- 新たなビジネスチャンス
MX規格には、追加データ機能という今までにない便利な機能があります。送金を例にとると、現在の世界中の決済インフラの多くは、スループットとコンプライアンスのために設計・最適化されています。
企業は、送金タイプの決済に追加の取引データや情報を組み込む必要があるかもしれませんが、そのデータの取り扱いは金融機関にとって優先度の高いものではありませんでした。現在の既存の決済メッセージ標準の多くは、送金データを含める機能を備えていますが、一般的に制限されています。MX規格に関しては、以下のようなものがあります。
- インボイスファイナンス
- 共通口座残高レポート
- 日中流動性レポート
- 与信の最適化
- リアルタイムのキャッシュマネジメント
- STPと自動化のコスト効率
銀行や企業は、MX規格を使用して、決済、資本市場、その他の金融システム間の内部金融メッセージを合理化し、複雑さを軽減して、ストレートスルー処理(STP)率を向上させることができるほか、次のようなメリットがあります。
- 支払プロセスの中断の減少
- 誤検出の低減
- 調査の削減
- 予測可能性と照合性の向上
- 再入力作業の低減
- 相互運用性とハーモニー
ISO 20022は、金融機関がクリアリングハウス独自のネットワークやSWIFTNet Interactサービスを通じて、Closed User Group ISO 20022メッセージを交換することを可能にします。国内決済と国際決済の相互運用性と統合を実現し、ビジネスラインを超えた単一のメッセージ標準による規模の経済性を提供します。
- デジタルコンプライアンスと規制の効率化
MX規格は、審査システムがフリーテキストメッセージから豊富なデータを抽出できるようにすることで、制裁対象または禁輸対象団体、政治的に露出した人物、制裁対象商品および港湾に関する支払いメッセージに対する審査を容易にします。
これにより、金融機関は不要なフィールドを自信を持って除外し、誤検出やノイズを減らすことができる一方、有用なデータを含むフィールドに対するスクリーニングを継続することができます。
- AMLおよびKYC要件への準拠
- 身元確認とスクリーニングのための構造と効率の改善
- 豊富な当事者情報:すべての当事者データがメッセージに含まれること。
- 債務者/債権者及び/又は最終債務者/債権者の指定
- リスク管理の強化
MXは、受取人の特定によりカウンターパーティーリスクマネジメントを強化し、また、国内外の現金および管理データを強化します。
その5:MT 規格⇔ MX規格への変換で十分
間違いです!トランスレーターの使用による規格変換は一時的な措置であり、以下の理由からネイティブのCBPR+アプローチに置き換えるべきです。
- CBPR+メッセージがCBPR+ワーキンググループに沿った一律のトランスレーションルールを持っているわけではないこと。
- AML/サンクション審査は、CBPR+版のメッセージに適用されるべきであること。
- 翻訳中にメッセージが切り捨てられる可能性があり、トランスレーターが変換内容の保証をしないこと。
- トランスレーターが、新しい ISO 20022* (CBPR+) メッセージの機能を利用した利益を得られないこと。
*ちなみに:ISO 20022は正式にはISO 20-oh-twenty-two(アイエスオー・トゥエンティ・オー・トゥエンティ・トゥー)と発音します。
その6:CBPR+のMX規格への移行方法は一つしかない。
MX(CBPR+)への移行を成功させるにはいくつかのアプローチがあり、金融機関ごとに目標、戦略、顧客の要件によって異なります。これらのアプローチには以下のようなものがあります。
- アドホック翻訳
- ネイティブの実装
- ハイブリッドアプローチ
- ペイメントハブオーケストレーターの一元化
- マルチテナントエンタープライズハブ
その7:現在のところMX規格への移行はあまり進んでない
嘘です!ISO 20022は、かつてないほど勢いを増しています。国際決済銀行(BIS)が2021年後半にCPMI(Committee on Payments and Market Infrastructures)が実施した調査に関する報告によると、回答者の74%が2025年までにISO 20022を導入しているか、または導入するための計画を立てているとのことです。