インタビュー:デジタルバンキングは、銀行の義務か選択肢か?

2021年10月17日

Carole Elias

Carole Elias

インタビュー:デジタルバンキングは、銀行の義務か選択肢か?

世界初のデジタルバンキングが登場したのは、1960年代。ATMやカードの使用がまさにそれでした。時は流れて2020年、人々は常にインターネットに接続でき、ブロードバンド通信は飛躍的な高速化・大容量化を果たしました。スマートフォンが普及し、オンラインバンキングが新たな標準となった背景には、顧客が金融を含むあらゆるサービスを、今いる場所から、即時に、デジタルに使いたいと期待するようになったことがあります。

今日におけるデジタルバンキングの意味とは何でしょうか?また、デジタルバンキングは、選択肢なのか、あるいは避けることのできない義務なのでしょうか?このテーマについて、ProgressSoftでビジネス開発の責任者を務めるキャロル・イライアス(Carole Elias)氏と対談しました。インタビューの全文をご紹介します。

Q:今日におけるデジタルバンキングの意味とは何でしょうか?

簡単な言葉で言えば、従来の銀行サービスの自動化です。それによって個人客と企業クライアントは、銀行が提供する製品やサービスに、ウェブや携帯端末を使ってインターネット経由でアクセスできるようになります。

Q:デジタルバンキングへの移行は、現在どのような状況にありますか?

キャロル:デジタルバンキングへの移行は世界規模で起こっていて、銀行は顧客とのやりとりを対面からデジタルに移行すべく、サービスの電子化、支店の営業時間変更、デジタル決済手段の導入など、非常に多くの試みを続けています。

従来からある銀行が昨年実施した変更点を振り返ると、60%が支店の閉鎖や営業時間短縮を行い、34%が手続きを完全デジタル対応させ、18%が非接触型決済手段を展開しました。

デジタルバンキングへの移行は、現在どのような状況にありますか?

先を見れば、デジタルバンキングへの移行は各行が掲げる2022年の優先事項トップ3に入る重要な目標になっています。

デジタルバンキングへの移行は、現在どのような状況にありますか?

つまり、昨今の変化はただ速いだけでなく、歴史上に例がないほど顧客指向で進んでいると言っていいでしょう。

Q:デジタル化の速さの理由は何でしょうか?また、銀行がこぞってデジタル化に力を入れる背景に、どのようなことがあるでしょうか?

キャロル:デジタルバンキングへの移行の原動力は、まぎれもなく市場ニーズの変化と顧客からの期待です。銀行は、競争力や市場シェアを保持したいだけでなく、デジタルバンキングによる新たな利益を熱心に追求しています。例えば次のようなことです:

  1. 地理的なリーチ拡大:デジタルバンキングを活用すれば、ビジネスの地理的な拡大が非常に低いコストで実現すると考えられています。支店を新設せずに、これまでよりずっと幅広いターゲットにリーチすることが可能です。
  2. 新たな収益チャネル:デジタルバンキングのプラットフォームを導入することで、銀行はそこから得られるデータを活用し、確実な顧客エンゲージメントの構築や新サービスの企画ができます。このことが、新たな収益ルートの創出に役立ちます。
  3. ペーパーレス取引:従来型の銀行取引における最大の難点のひとつに、書類の持つ役割が大きすぎることがあります。デジタルバンキングの発展により、銀行での手続きのペーパーレス化が進んでいます。
  4. コスト削減:大量の書類や手作業での手続きがなくなることで、銀行員がそれらに費やす時間が減り、大きなコスト削減につながります。
  5. 利便性向上:顧客体験を最大限に高めることは、各行の重要課題です。その中でデジタルバンキングは、顧客が24時間365日、どこからでも銀行機能にアクセスでき、あらゆるサービスを利用できる環境を提供しています。

また、ビジネス競争が金融業界の景観を格段に押し広げていることも欠かせないポイントです。競争により、銀行のデジタル化が加速しているのです。

Q:なぜ、競争によって金融業界の景観が押し広げられているのですか?

キャロル:過去10年から20年には、銀行の競争相手は他の銀行に限られていました。もちろんそこにも厳しい競争が生まれましたが、結局はどの銀行も、サービス手数料、利用料、新サービスの企画から提供開始までの時間など、同様の制約にぶつかっていました。

しかし現在は、ネオバンクやチャレンジャーバンク、フィンテック、ネット専用銀行など、新しい種類の金融機関が参入したことにより、競争が格段に激しくなっています。銀行は、今まで通りの競合相手だけを見ていられません。ビジネス競争が拡大し、それが銀行のスピーディーな動きの理由になっているのです。市場シェアを守りたいからです。

Q:銀行は、単にオンラインサービスを取り入れれば、デジタルバンキングを提供していると言えるのでしょうか?

キャロル:残念ながら、答えはノーです。銀行がデジタルバンキングを提供していると言うためには、例えばこのような努力が内容です:

  1. 全サービス対応:個人から企業まで、顧客が利用する全サービス領域を網羅し、取引やそれ以外の事項に関する窓口サービスについても遠隔利用できるようにする必要があります。
  2. 24時間365日利用可能なサービス:サービスは24時間稼働します。顧客が銀行の営業時間に縛られず、どんな時間でもサービスを使える仕組みが求められます。
  3. 従来の銀行取引にはできないサービス:位置情報に合わせた広告表示や、ゲーム要素の追加、個人向けの金融管理や、顧客の行動に応じた予測分析など、デジタルライフスタイルに相応しい新サービスを導入しましょう。
  4. 統一感のある顧客体験:適切なデジタルバンキングの仕組みを使えば、顧客に統一感のある体験を提供することができます。例えば、特定のチャネルから銀行サービスを使い始めた人が、別のチャネルに移った後でも、全く同じ方法で操作できるということです。顧客中心の考え方にのっとり、個人に向けたメッセージを発信し、彼らがスムーズに情報にアクセスできるよう統一したアクセス源を提供することを意味します。
  5. 直感的なユーザー体験:ユーザー体験(UX)という概念の目的は、ユーザーのニーズに適ったデジタル金融サービスを創出し、簡単で快適な金融機能として提供することです。
  6. 魅力的なユーザーインターフェイス:デジタル製品における革新的で魅力的なユーザーインターフェイス(UI)は、デジタルバンキングに最低限必要なものです。UIはユーザー指向であるべきで、そのために利用者が製品に求めるものを理解し、内容をしっかりと反映させなければなりません。
  7. 効率的なサービス:時間はとても重要な要素です。どんな行為においても、利用者が費やす時間と手間が少ない程良いので、基本的にできるだけ入力の手間を減らす必要があります。端的に、明確に情報を伝えましょう。

この内容は、適切なデジタル体験を生み出すということに尽きます。サービスを提供しても、その中から顧客が必要とする項目になかなかたどり着けなければ、きっと諦めて別の場所に行ってしまうでしょう。

Q:デジタルバンキングに移行する銀行へのアドバイスはありますか?

キャロル:迅速に行動してください、そして今すぐに!顧客の声を聞き、彼らがどんな金融行動を取っているかを調査し、弱点を洗い出すためにあらゆるフィードバックを集めてください。厳しい言い方になりますが、数年うまくいったところで、それは現代の銀行事情を見れば何の意味も持ちません。業界の先を行きたいのなら、とにかく素早く行動することです。デジタルバンキングはもはや選択肢ではなく、銀行にとって避けられないものなのです。

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