2020年は、リモートワークやソーシャルディスタンス、規制や制限について新たな考え方が導入され、そして加速した一年でした。そのような中、銀行もそのクライアントも、こうした変化への対応の影響を今日に至るまで受け続けています。銀行の支店を実際に訪れてもらうことなく顧客にサービスを提供するということは、顧客の要望からしても、規制に対するコンプライアンスの面からしても、銀行にとっての必須要件となりました。
昨年における主なキーワードのひとつが「デジタルトランスフォーメーション(デジタル変革)」です。銀行が遠隔でサービスを提供し続けられるようにする上で「完全デジタル」プラットフォームへの移行ニーズが急増し、その結果としてデジタル変革の導入は一挙に加速しました。では、デジタルトランスフォーメーションを現実のものとしている新興技術、あた2021年から先を担い続けていく技術にはどのようなものがあるのでしょうか。
以下に紹介するのは、2021年にぜひ導入を検討いただきたい3つのテクノロジーです。
- クラウドコンピューティング
銀行にとって必要となるであろう最初の新興技術は「クラウドコンピューティング」です。コロナ禍やロックダウンの影響によって物理的な外出が制限されることとなりましたが、これは銀行の顧客にとっての問題というだけではなく、情報技術の専門家や管理者といった、銀行のデータセンターを運用したり保守したりする人員にも関連することです。パンデミックの初期以降、多くのデータセンターの一部または全体で停電が発生したのはこうした制限があったが故のことです。
これらの制限を克服するべく、銀行界では顧客に関連する重要なサービスをクラウドコンピューティングプラットフォームに移行する動きが進んでいます。しかしこうした中でクラウド移行を加速するためには、規制当局によるフレームワークの制定が必要です。
これに関連して、以前の記事「金融業界におけるデジタルの真実」では、銀行サービスの50%以上がひとつ以上のデジタル形式で提供されており、クラウドコンピューティングベースのプラットフォームに移行される可能性があることが示されています。
- アプリケーションプログラミングインターフェース(API)
以前の記事「バンキングサービスに変革をもたらすオープンAPI」では、ProgressSoftのリードアーキテクトを務めるAli Qoulが、オープンAPIを導入してサードパーティのシステムやソリューションとの統合を簡便化し、銀行および金融サービスをより広い顧客ベースに浸透させていくことの必要性について説明しています。
クラウドコンピューティングシステムに切り替えることでAPIが異なるエンドポイントをカバーできるようになり、市場参入までの時間を短縮するだけでなく、遠方のクライアントの新規獲得や既存顧客の維持に役立つ新しく革新的なソリューションを導入する上での可能性が切り拓かれることとなります。
- 人工知能(AI)と機械学習(ML)
リモートで顧客管理を行っている場合、適切な顧客確認(Know Your Customer)手順を実施し、銀行が提供しているサービスに登録する意思を示した新規顧客を正しく特定する必要があります。このような場合に役立つのが、人工知能や機械学習を用いたソリューションです。ProgressSoftが新たに立ち上げた電子顧客確認(eKYC)のように初期登録で使えるだけでなく、自動署名照合システムのように目的に応じて付加価値をつけることもできます。
リモート登録やサービス説明のセッションにおいて、機械学習技術を用いることで、顔認証や生態検知、文書の真実性の検証等を通じて匿名の人物の身元を確認することができます。また、通常であれば顧客への電話応対には常時稼働する専用のコールセンターが必要となりますが、スマートな人工知能を搭載したチャットボットならデジタルバンキングプラットフォーム上での顧客からの問い合わせに対応することができるだけでなく、問い合わせがあった時点で解決を分析・提供できるサードパーティベンダーや担当者に該当の問題を割り当てることも可能で、こうした点からこのようなチャットボットは今や必要不可欠なものとなっています。
また、システムの健全性モニタリングやログ、アノマリー分析、リアルタイムの偽造・不正検知といった点においても、AIは非常に重要な役割を担っていると言えるでしょう。