グローバルなパンデミックによりユーザーのニーズや振る舞いが変化したことで、かつては管理できていたことが問題に転じてしまう、という状況がいま発生しています。これによって挑戦を強いられているのがユーザーエクスペリエンス(UX)の調査担当者たちです。ユーザーフレンドリーなジャーニーや体験を実現する方法についても、パンデミックに伴い課題が明らかになってきたからです。
ユーザーエクスペリエンスの調査には個人とのやり取りが含まれます。ユーザーインタビューを行う場合は、答えるのが難しい複雑な質問をする必要があるだけでなく、観察と傾聴も注意深く行う必要があります。通常、ユーザーインタビューは対面で行われ、調査員はここからユーザーのフィーリングや表情を読み取って、その人の考え方や振る舞い方について理解します。
調査員は通常、普段の振る舞いについてユーザーに質問するところから始めます。
しかしこの現状では、その「通常」が望めないのも事実です。
人間の表情は様々な感情を伝えることができるものであり、これにより調査員はユーザーとのやり取りをより深く理解することができるようになります。つまり、マスクをしているユーザーとのインタビューでは、同じインタビューでも効率性が異なるのです。表情での反応が見えない、声がくぐもってしまう、またユーザーの唇の動きなどを見ることができないためです。ユーザーの言葉も聞き取りにくくなるため、理解が難しくなってしまいます。
残念ながら、マスクをせずに面と向かって話をするということは、現段階では現実的ではありません。また、マスクを外した対面インタビューがいつ可能になるかということについても、はっきりとした状況は分かりません。このため、ユーザー体験の調査員の多くがリモートでの調査手法を取り入れるようになってきています。リモート調査では、ハイエンドなツールや数々の機能など、この目的のためにデザインされたものや、コロナ禍以前に既に使われていたものなども含まれますが、こうしたツールはたいてい高額で、扱うことのできる人員も限られてしまいます。
プロの世界には、個人とのやり取りを介したリサーチやテストが不可欠というようなプロダクトが存在します。こうしたプロダクトは、例えばユーザーの通常の環境における振る舞いに強く依存するものや、物理的ハードウェアを含むようなものなどがあります。また老年の方を対象としたリモートテストの実施などにおける課題など、個人に合わせたテストを行う上でのやり方にも限界があることも指摘されています。
UXチームにとって、デジタルへのシフトは通常よりも「痛み」を伴うものなのです。
リモートリサーチおよびテストはパワフルで、あらゆるビジネスにおいて必要な手法です。リモート環境を活用することで、調査員は様々な参加者を募り、調査のセッションにおいてもよりフレキシブルにスケジュールを組むことができるようになります。このため、現在のリモートアプローチは、コロナ改善の従来のアプローチよりもより効率的で効果的であると考える調査員もいます。一方で、技術的な課題と言うよりも、人間との触れ合いというところで課題があるのであって、多くの調査員はそれを大切に考えているのであるという指摘もあります。
最後に、コロナ禍においてUXリサーチを行う上で、新たな懸念やツール、手法が現れてきたことについては、疑う余地はありません。現在においてもUXチームは、新たなストラテジーを考え、変化に対してオープンであり続け、新たなリソースを取り入れたり導入したりしていく必要があるのです。それが例えば透明マスクの登場なのか、それともアクリルパネルで隔てた環境でのインタビューなのか…?今後、より良く効率的な手法が考案されることを祈るばかりです。